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現代家族の課題とオルタナティヴ家族の可能性|オープンlabレポート(May, 2023)

「生き方開発lab」は、自分らしく新しい生き方を創造するためのlabコミュニティです。現在は「遊ぶと働くの未来」「オルタナティヴ家族」「オルタナティヴ宗教」という3つのテーマで、それぞれの新しい形を模索しています。

5月21日、東京・中野の生き方開発labで、「オープンlab」を開催しました。研究開発を担当するlabフェローや、それを支える仲間であるlabメンバー、興味がある方、どなたでも参加いただける場です。

今回の担当は「オルタナティヴ家族」開発室。「現代家族の課題とオルタナティヴ家族の可能性〜「親密圏」を考える」というテーマです。

現状を俯瞰した上で、自分の望みを考える

多くの人がイメージするいわゆる「家族」とは、生活の基礎となる大事なもので、夫婦と子どもがいて、愛情でつながれている…というものではないでしょうか?しかし歴史を調べると、このような家族像は近代社会になってできたもので、決して普遍的なものではないことがわかります。さらに今日、世界をみわたすと、家族をめぐる制度や、家族についての意識、形も多様化してきています。

今回は、今の日本はどういう社会なのか?ということについて研究成果発表をした上で、「親密圏」という視点などを紹介し、これから自分がつくっていきたい「親密圏」や人との関係を考えました。

【当日のスケジュール】
●オープニング・自己紹介
●研究成果発表①: 私たちはどんな社会を生きているのか?
 ・第一の近代・第二の近代(西欧・北米と日本・東アジアの変遷の違い)
 ・日本における家族・他者
●グループトーク①:日本の現状についての発表を聞いて、実感することは?
●研究成果発表②:「親密圏」とは?人とどんな関係を築いていきたいか?
 ・「親密圏」とは?
 ・これからの人との関係
●グループトーク②:これから築きたい「親密圏」や他者との関係は?
●全体シェア・クロージング

私たちはどんな社会を生きているのか?

前半の研究成果発表は、私たちが今生きている日本社会とは、どういう社会なのか?ということについてです。

当日発表した資料の一部

まずは近代以降にたどった、西欧・北米、日本、東アジアの変遷の違いです。近代を迎え、「家族」を単位に社会の制度が作られ、「愛情でつながり、性別の違いで分業する夫婦と子ども」という家族の形が一般化したところは共通していました。しかし、西欧や北米は、その後、家族を作る作らないに関わらず、個人の権利を守る法律や制度がつくられたのに対して、日本をはじめとする東アジアは、依然として家族が社会制度の単位であり、家族的イデオロギーが強い社会であるという研究結果を発表しました。

さらに日本では、親族や地域コミュニティが衰退する中、家族の役割が大きくなりすぎ、家族以外で経済的な助け合いやアイデンティティを得られる機会が減り、結果他者との交流や助け合いを最小限にして自己責任に重きをおく「自助」の考え方が社会全体に広がったことを紹介しました。

「親密圏」とは? 人とどんな関係を築いていきたいか?

後半の発表では、まず「親密圏」について説明しました。「親密圏」は従来は家族を指していた概念ですが「愛などの情感的結合を元に結びついた人間関係からなる領域」としたとき、これが他の関係性とどう違うのかということを説明しました。さらに、これからの人との関係や生き方についての論など、自分が築きたい関係を考えていく上でのヒントとなる視点を紹介しました。

グループトークの様子

前半・後半の発表の後、ぞれぞれグループで話し、出た話を最後に全体で共有しました。参加した皆さんからは以下のような声が聞かれました。

  • 日本がいかに「家族」というものに、いろんなことを負わせている社会なのかよくわかった

  • 忙しすぎる社会で、家族の中も他の人とも関係が築きづらい。もっと余白の時間が必要なんじゃないか

  • 家族の中でも、違いを認めて話し合いができるスキルが必要じゃないか

  • 愛情で結ばれる親密的な関係と、目的などで結ばれたコミュニティと、両方つくっていくというのはなかなか自分には難しそう

  • 具体的な人との関係、人への表現を大切にしていきたいと思った

まとめ|この社会で、どう生きていきたいか?

近代以降に日本がとってきた途と現状を調べてみて、今の社会はこうなっているんだというのがよくわかり、そうだなと実感することがありました。親の世代と自分の世代でもだいぶ環境が変わってきて、自分が漠然と抱えていた不安の正体も、社会から影響を受けているものだということがわかりました。

こんな社会だったら不安で当然だな、と思うと共に、その上で、リスク回避的な自助策を講じておくという発想でなく、自分がありたい姿勢=親密な関係にかかわらず他者のためにできることをする、助け合っていくという姿勢で生きていきたいと思いました。

今後の研究開発では、さらに具体的に、生活領域を共にすることなど、具体的なオルタナティヴ家族の可能性を探っていきたいと考えています。


告知|6月の生き方開発lab

次回のオープンlabは6月25日(日)開催

次回のオープンlabは「信仰って何だ?〜無宗教の立場から考える信じる力」をテーマに開催します。

とくに宗教には興味もないし、特定の宗教に対する信仰はない、という人でも、生きるための自分なりの「柱」のようなものはあると思います。

オルタナティブ宗教研究開発室では、信仰は一人にひとつ自分自身の中にあるという仮説を立て、宗教はなくとも、人間が生き生きと生活するためには「信仰」は大切なものなのではないかと考えました。

でも、信仰って一体なんなのでしょう? 6月のオープンlabでは、信仰とは何か、人間とは何か、ということについて、考えたいと思います。

詳細・お申し込みは、以下のページをご覧ください。


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