オルタナティヴ宗教開発室|研究レポート②
こんにちは、オルタナティヴ宗教開発室の志摩です。
この開発室では、その国の文化や国民性を形成するのに、大きな影響を及ぼしているであろう宗教を研究しています。
生き方を開発するうえで、根源的なものへアプローチは、大きなヒントになると考えたからです。
*labでは、年度でテーマを設定し研究開発をしており、今年度は「宗教」「家族」「遊ぶと働く」という3テーマの開発室を設けています。
なぜ世界5大宗教をしらべたのか?
まずは、なぜこのテーマを選んだのかを説明します。
・常識のひとつ下から価値観をながめられそう
・人間とは何かという本質にせまれそう
・人間や人間社会を客観的にみられそう
自分らしく新しい生き方を開発したいと思っていても、常識や社会通念の上にいるままでは、「引越し/留学/移住」とか「転職/起業」とか「結婚/離婚」とか、世俗的な選択肢しか出てきません。
環境を変えることで、気分や生活スタイルの変化は起きます。でも、それは外的な変化であり手段というだけです。根っこにある自分にはいつも問い続けなくてはいけません。
手段を選ぶ前に、自分の願望や感覚に向きあうには、まずは常識や世俗から一歩離れてみないと、結局は外にある価値観からしか考えられないと思いました。
世俗から離れる、ところいうところで出てきたのが宗教というインスピレーションです。
いまの自分としては、既存の宗教や何かを信仰することにすがりたい、というような願望はありませんが、人間が救いや願いを求めてつくりだした宗教には大きなヒントはありそうです。
物質的な豊かさではなく、人間の本質的な願いを扱う宗教は、どうやって生まれ、どうしてそういう形になったのか。そんな疑問から、歴史も古く、信者も多い、世界5大宗教を調べてみようと思いました。
世界5大宗教の比較
ざっくりなので、その宗教の本質までは到底理解できませんが、あくまで初心者編ということで、基本の「キ」をおさえていきたいと思います。
その宗教が、一神教か多神教かというところで、人と神との距離感が大きく違います。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教では、神は人間を超越した絶対的な存在ですが、多神教では、神は人間の生活や物などに宿り、いたるところに存在を感じられます。
もうひとつのポイントは、宗教は意外とローカルだということです。どの宗教も、特定の地域の特定の歴史の中から生まれています。それぞれの宗教に、愛だったり、煩悩からの解放だったり、普遍的な教えはあれど、どこかローカルな部分も含んでいて、地域的な文化の一種にもなっています。
各宗教の歴史と教え(一神教グループ)
それぞれの宗教に地域性や発想に特徴があるので、おおまかにストーリーや特徴を紹介します。
【ユダヤ教】
一神教の3つの宗教で、いちばん初めにスタートするのがユダヤ教です。
ユダヤ教では、神ヤハウェを天地を創造したたったひとりの神と考え、ユダヤ民族を倫理的に導く神様としています。個人の救いではなく、民族の社会的正義に焦点が置かれています。
ユダヤ教徒が重視するのは観念よりも実践であり、祖先から受け継いだ儀礼や生活規範など、様々な規則をまじめに守っていくことにあります。神に選ばれた民として選民意識があることも特徴です。
【キリスト教】
キリスト教はユダヤ教からの派生です。開祖イエスはユダヤ人宗教家です。
ユダヤ教が「人々が神の集団的規則を守る」というのがモチーフなのに対して、キリスト教では「人間は規則主義に耐えられない」ということがモチーフになっています。
人間は弱さや諸般の事情から規則を守りきれないし、守ったところで、それは偽善的なものであり得ると考えています。
規則を守った者が、守らなかった者を差別するなんてことが起こったら、本来は善意のものであった規則自体も面目が丸つぶれです。キリスト教はこのあたりのことを突いています。
【イスラム教】
ユダヤ教・キリスト教をルーツにもつのがイスラム教です。
歴史的大宗教の中では最も新しい宗教であり、具体的な規則があるあたりはユダヤ教式ですが、民族へのこだわりがなく、誰でも信者として迎え入れるという点ではキリスト教式です。
イスラム教は歴史的に政治や法律の領域を広く覆っており、社会に唯一神の正義をゆきわたらせるという建前通り、壮大なイスラム法の体系を築きあげてきました。
礼拝の仕方のような宗教的なものから、結婚や離婚、遺産相続など民法にあたるもの、商法、刑法、さらには国際法にあたるものまで、人生の万般におよんでいます。
神の啓示に基づく宗教的共同体でもあり、かつ政治的共同体でもあるというのが、イスラム教の特徴です。
各宗教の歴史と教え(多神教グループ)
太古の人類社会においては、どこでも多神教の方が一般的でしたが、ユダヤ・キリスト・イスラム教という一神教の宗教は、なぜか旧大陸の西の方で誕生し、やがては西方の世界を覆うようになりました。
しかし東方では、これまたなぜか多神教がそのまま発展し繁栄しています。
【ヒンドゥー教】
ヒンドゥー教には開祖がおらず、インド民族が太古の昔からやってきた神々の信仰や儀礼の総体をヒンドゥー教とよんでいます。そのために、起源はあまりはっきりしていません。
神々の人気には流行り廃りもあるようですが、信者は今自分が拝んでいる神を宇宙最高神と捉えていることが多いようです。信仰の現場においては、多神教も一神教も紙一重ではあります。
宗教的な社会秩序をなすものとして身分・階級制度「カースト制度」が重視されました。こうした社会秩序の中で分を守って暮らすことを良しとしてきたのです。
死後も含めた世界観として「輪廻転生」があります。迷いのある人間は、いつまでたっても生まれ変わりを繰り返し、現世で善い行いをすれば、来世ではもっといい身分に生まれ変われると考え、修行によって業を払うことを求めています。
ヒンドゥー教の宗教的理想は、この輪廻からの解脱です。
とはいえ、ヒンドゥー教は民族宗教であり、習の総体であるため、教えのコアがどこにあるのかを述べるのは難しい部分もあります。
【仏教】
仏教の起源は、紀元前5世紀ごろ、開祖といわれる釈迦の悟りです。
釈迦の死後に、仏教教団において100年、200年の間に、伝承される釈迦の教えのポイントの整理が進みました。ただし、これは修行のポイントを箇条書き的に示したものであって、釈迦その人が説いたものではないそうです。仏教教理は、歴史とともに次第に複雑さと哲学性を増大させます。
人間が悟りを開くことを出発とした宗教でしたが、人間はそうそうには悟れないので、開祖の釈迦自身が次第に神格化されていく動きも見せました。
仏教の信仰にはかなり幅があり、釈迦にならい修行をして悟りを目指す人もいる一方で、神話的なブッダを拝んで救済力にあやかろうとする人もいます。
現代に宗教は必要なのだろうか?
このように、おおまかではありますが、5大宗教の輪郭をまとめました。
どの宗教がいいとか悪いとかではなく、人間の願望や反発心を具現化していくなかで、複雑な変化や枝分かれをしていっています。
発想やシステムの違いはあれど、どの宗教も起点には人の願いがあります。
今も昔も人間は何かを願っていて、太古の昔に「宗教」という形が生み出されました。
現代では、文明や国家の発展とともに、宗教の影響力は縮小しています。代わりに台頭していた、科学による解明だったり、経済の発展だったりも、国や個人に差はあれど、日本においては終焉を迎えはじめているように感じます。
自分の求めるものは何か?人生の喜びとは何か?
そんなことに向きあう機会や時間が増えた時代に、人間の本質・本来の姿に立ち返って、世俗から一歩離れて感じたり考えたりすることは大事なことになりそうです。
今はまだ宗教としか呼べないけれど、既存の宗教の複製ではないオルタナティヴな宗教、そんなものの開発を目指して、今後も研究や、開発のための実践を、生き方開発labでは取り組んでいきます。
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